2019/03/25

IRONMAN NZ 2019 第6章「Run ~腹痛と星空と全力ダッシュ~」

ここまではこちらから。
  1. 第1章「出発前」
  2. 第2章「NZの洗礼 ~ムール貝とスマホ~」
  3. 第3章「Swim ~ゴーグルと朝日~」
  4. 第4章「Bike Lap1 ~ジェルとトイレ~」
  5. 第5章「Bike Lap2 ~向かい風、同期、時々コーラ~」

3月2日(土) 15時40分


1周目(0-14km)

T2は死ぬほど休んだので、走り出しの感触は良い。手元のGarminでは6'00"/kmを切るペース。ダメダメダメ。このペースでは絶対バテる。
最初の2kmほどは対面通行になっていて、1km程進むと、大典とすれ違う。
僕「大典!ファイト!」
大典「おう!やっべぇキツイ!」
まじか。ミドルの経験もあり、僕よりはるかにトライアスロンランになれているだろう大典がわざわざ「キツイ」というんだから相等なんだろうな…とは思ったものの、一方の僕は、Bikeによる体の重さこそあったものの、キロ6で問題なく進んでいて、何がきついのか、この時にはまだよくわからなかった。

Runのエイドは2.5kmおきにある。最初のエイドは最初の坂の中腹にあった。エイドにはBikeのときにおいてあったもののほかには、ポテチ・クッキー・チョコ・氷が追加されている。最初のうちは余裕もあったので、水をもらって頭からかぶり、Electrolyteを飲み、バーをほおばって、Electrolyteで再び流し込んでさっさと通過した。

コースレイアウトは、タウポのモーテル街から、5km程離れた隣の住宅街まですすみ、住宅街の中をぐるぐるして、戻ってくることで1周14kmのコースを3周回なのだが、途中500m程度で15m位を上る、イメージ的にはループの大学会館前の位の坂が3~4つあるので、割と足を削られる。

僕も10km過ぎまでは先述の通り余裕だった。1kmごとのLapは
6:05-5:49-6:54-5:50-6:10-6:21-5:55-6:05-5:55-6:21
と、坂道とエイドを考慮すると、ほぼキロ6のペースが守れたといえる。

10kmを過ぎると身体に異変がやってくる。まずは、腹痛。
これの原因はすぐわかった。汗冷えだ。スタートした直後は汗をかくほど陽も出ていて、エイドでバンバン水をかけたもんだから、ある種持病ともいえる(笑)汗冷えが発症した。

5個目(12.5km付近)のエイドでトイレに駆け込む。Bikeのときとは意味が違う、緊急を要するトイレ。
とりあえずトイレを済ませたが、このとき完全にウェアの選択をみすったことを悟る。
汗冷えする体質なのに42kmもトライスーツで走ってはいけない。今後の戒めである。

それでも、トライスーツを着たのは、なんとなく「桐の葉のトライスーツでゴールしたかったから」と思ったから。まあ、自分のじゃないのだけれども、学群生活を締めくくるうえで、ウェアは桐の葉が良いなと。これに対しては、2周目に答えが出る。

さて、ここからが地獄。
トイレで出すものは出したものの、汗冷えは止まらず、止まってしまったせいか脚が重くなる。ペースはキロ7を割り、おなかはぴーぴー。
宿の前で堀さんに会って、発破をかけられる。そして、前ももが攣りかける。
Run Lap1(14.2km) 01:33:38 (6:35/km)
ギリギリ生きてる


2周目(14-28km)

そんな状況で2周目に繰り出す。時刻はすでに17時を回っているが、Taupoの日の入りはこの時期20時前後なので、まださほど暗くない。

しばらくすると大典とすれ違う。お互い辛い。とか思ってるとひざに痛みが。
そして、再度腹が冷える。本日6度目のトイレ。
トイレから出て、コースに戻るも上り坂なので歩きながら登る。
エイドで飲み食いしながら今後どうしようかと考えてると後ろから大典に追いつかれる。
どうやら、大典は登りは歩く方針で進んでいるようだ。
登り区間が終わって大典が先に行く。とりあえずおなかの調子が落ち着くまで歩くことにして3周目に勝負をかけようと決意。

2周目の住宅街に入るところで「スペシャルニーズバッグ」の存在に気づく。まあ、今回僕は何も預けてないんだけれども。ここに桐の葉トライスーツ預けておいて、途中から着ればよかったんじゃねと今更気づく。遅い…笑

ちょうど20km過ぎだろうか。後ろから智紀に抜かれる。そういえば、この前後で慶應の小野君にも抜かれた(勿論周回差。詳細を覚えてないので割愛)。お互いの状況を話しつつ、智紀が先に行く。
颯爽ととは行かないが着実に歩を進める智紀と、歩く俺。ん~どっかで見覚えがあるなこの風景。そうだ、つくマラだ。またか。
そんなことを考えていると22.5kmのトイレエイドにたどり着く。またトイレ休憩。汗もぼちぼち乾いてきた。トイレから出て、コーラを飲んだらなんかやる気が出てくる。
そろそろ動き出すか。ただ、坂は無理だ。ってことで「平地だけは走ろう」作戦に変更。
名前の通り、坂は登りも下りも走らない。

坂でまた一人抜かされる。ン、見覚えのあるトライスーツ。Afroだ。名前を見ると武部君。坂が終わり、平地で走り出すと割とすぐ追いついた。というのも、1h近く休んでいたおかげで(せいで)、平地の走速度はキロ6かそれを切る程度まで回復していた。
少し武部としゃべりながら並走し、また下り坂で離される。また平地で追いついて、坂で離されてを繰り返す。よくよく考えると嫌な奴だったに違いない。

そんなことを繰り返していると、再度智紀を捉える。そして、小野君も捉える。
皆疲労困憊。ペースの差や、エイドで休む時間の差もあり、なんだか抜かしたり抜かされたりが続く。

こんな状態でもメンタルを保っていたのは間違いなく沿道からの歓声のおかげ。
「Yuji, well done!」「Go! Go!」などとたくさんの人の応援に背中を押された。それは走っているときはもちろん、坂道を歩いているときもである。背中を押されただけではない気もする。時折、沿道のテンションに合わせて僕も「Hooo~~!!」などと声を張って返事をした。これがアドレナリンをバンバン出してるんじゃないかと途中から思い出し、沿道の声援に積極的に応えていく。
そのテンションでカメラ向けられたのでおもわずポーズ笑

そして僕は28kmのエイドで再度トイレ。もう何度目か覚えてない。トイレから出てくると、反対車線を智紀と武部が走っている。なんでも、後から聞いた話では智紀は僕が入ってたせいでトイレに入れなかったらしい。ごめんごめん。

そして、走り出して3周目に向かおうとすると、小野君ゴールのアナウンスが。おめでとう。
そしてさらに偶然ゴール会場から宿に戻る大典に遭遇。なんと12時間切ったらしい。すんげえなおい。智紀と武部と抜きつ抜かれつで走っていることを伝えると、「ゴールで待ってるわ」と言われたので、頭が回るんだか回らないんだかよくわからない僕は「なんだかんだaveキロ7で走れると思うから1.5h後位にはゴールするわ」と発言。

うん、確かにaveキロ7が正しいなら正しいよ?でもね、どこからキロ7の根拠が出ているんだい???
今ならばこう問うてやりたい。ちゃんと大典は1時間半後にはビクトリーロードでカメラ構えてくれていたらしい。ごめんなぁ

Run Lap2(13.8km) 02:11:12(9:30/km)

3周目(28-42km)

時刻は夜の19時半少し手前。さあ、あと1周だ。最初の2kmはほぼフラット。なので、僕もキロ6で走り、智紀と武部を抜かす。30.5kmのエイドで歩き、また武部に抜かれる。

そうこうしているうちに日が暮れる。エイドで保温用のポンチョが配られ始める。体が冷え切ってるのですぐもらう。着てみると、これはありがたい。すげえあったかい。そして、次のエイドでスティック状の蛍光ライトをもらう。安全用らしい。そして、平地が来たので走り始めようとしたが、もう筋肉が走りたがらない。うーん、なんとも。あと7km。どうしようかと考えた末、休めば回復するだろうという考えの元、ラスト2kmだけ頑張ることにした。

しばらく歩いていると37km地点で智紀に追いつかれる。智紀もきついのか、ラスト2kmだけ頑張る話をすると、一緒に行こうという話になる。智紀についていって軽くjogを再開。「大典、俺らが一緒に来ること予想してるかね」とか「ビクトリーロード全力ダッシュな」とか「でも最後は一緒にゴールしようぜ」とかくだらない話をしながら。

すでに僕がRunコースに出てから5時間は経過し、時刻は21時に近づいてきている。ふと空を見上げるとそこには満天の星空が。ちょうど道路から少し離れた湖畔の遊歩道を走っているときだったので星がすごくきれいに映っていた。智紀と「星出てるよ笑」「俺ら今レースしてんだよな笑」とか話しながら、確かに、スタートしたときは日が上り始めたころで、そこからかれこれ14時間弱も運動しているなんて、我ながらおかしい。何やってるんだ。笑えてくる。しかも、最後の局面になって一緒に走っている。IRONMANじゃなきゃありえないだろうな。

そうこうしているうちに残り2km。智紀と一緒にペースを上げる。しかし、二人とも体は限界なようで、お互い交互に攣っては止まり、つっては止まりを繰り返す。宿の前で堀さんご夫婦が応援してくれている。ポンチョ邪魔だったので預け、あと1km先へと迫っているゴールをめざす。

ゴールまであと400m、ゴール会場直前の最後のエイド。智紀と二人でコーラを飲み干す。
智紀「このコーラ、人生で一番うまいわ」
僕「わかる」
智紀、コーラで復活したのか、もともとためていたのか、ビクトリーロード手前にしてペースを上げる。一方の僕、ついていけない。「まって(笑)」

ビクトリーロードの入口へと差し掛かる。前および後ろとの間隔は十分。
智紀がルーティンとしている「ラスト200mダッシュ」を2人でやって一緒にゴールしようという計画。ほかの人と被ってしまっては面白くない。

マットが引かれはじめている位置に二人で立ち止まる。周りの関係者に怪訝そうに見られる。俺も14時間半の旅路の最後に智紀と全力ダッシュするとは思っていなかった。なかなか面白い最後じゃない?
僕の息が落ち着いたところで「じゃあ行くか」二人でカウントダウンを始める。

Three...!

Two...!

One...!

Goooooooooooooooo!

瞬間、二人は走り出した。瞬間、智紀は僕の視界から消えた笑
いや、いくら短距離専門とはいえ、お前14時間運動してきたんだよな?さっき脚攣りかけてたよな?って言いたくなる走りっぷり。僕は僕なりにダッシュ。
奇跡的に撮られてた。遅くてラッキー。
先に走り終えた智紀がゴールライン手前で待っている。大典もおそらくどこかで見てくれている。
ちゃんと走ってる!
走る僕と待つ智紀
ラストスパートで、最後は智紀と手を取りゴールラインをまたぐ。そして、

「You~~~~are~~~IRONMAN~~~」
というMCの実況。226km、14時間半の長旅は今ここに終結を迎えたのである。
We are IRONMAN!
Run Lap3 (14.2km) 02:06:13(8:53/km)
Run (42.2km) 5:51:03 (8:20/km)
Total (226km) 14:30:00

ボランティアの方にフィニッシャーメダルとフィニッシャータオルをかけてもらい、リカバリーテントへ誘導される。

リカバリーテントに入り、体重チェックを受ける。63.5kgでチェックインのときと比べて1.5kg減。よく食った証だろう。ちなみに僕の前の人は4kg以上減っててメディカルテントに連れていかれていた。

体重チェックの後はギアバックとフィニッシャーTシャツを受け取る。
そして、ご飯が待っている。コーラを飲み、ピザ2枚とチキンヌードルを食する。うんめぇ。胃腸がやられて食えない場合も想定していたが、全然食える。うまい。

そして、マッサージもやっている。僕は受けたかったが、智紀は帰りたいとのことなので、ここで一度別れる。マッサージの順番待ちの最中にピザを食す。うまい。
マッサージの順番が回ってきた。ボランティアのおっちゃんのすっげーパワーでゴリゴリやられる。いってぇ…余りの痛さに顔が歪んだのだろう。おっちゃんにっこりしながら「Sun burn! hurt?」とニコニコしながら聞いてくる。あー日焼けなのか。ここにきて日焼けの存在に気づく。たしかに日焼け止め塗ってないもんなあ。痛い。おっちゃん容赦ない。あれが痛がってるのみて、ニコニコしやがる。でもマッサージ自体は気持ち良い。

あれこれ考えてたらマッサージが終わった。やることは終わったので、リカバリーテントから出て、フォトスポットがあったので写真を撮ってもらった。

トランジエリアに入り、自分のバイクと再会。トランジで使ったギアバッグも揃えておいてくれている。本当に運営のボランティアの方々には頭が上がらない。
一人で宿への道を歩く。歩くというか、ロードバイクを歩行器替わりにしていたが。

宿に帰って大典と智紀と再会。3人ともつかれて写真を撮る元気がないので集合写真はなし笑僕もさっさとシャワーを浴びて、少しばかりTwitterをして、さっさと寝た。

人生で一番長い一日だったといっても過言ではない。ベッドに横たわるとすぐに眠ることができた。

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