2019/02/27

IRONMAN-NZってどういう意味か議論するブログ。第五章ラン編~悟り~

こんにちは。
超お久しぶりです。修士一年の菊池です。
大先輩にブログ完結させろ?って圧をかけられた気がします。一年前の記憶を思い出しながら、IRONMAN-NZのレースレポ、ラン編を書きます。
!これからIRONMANに挑む卒業生諸君へ。激しく絶望すると思うので、読まないことを強くお勧めします。!
!卒業旅行でIRONMANに出たいと思っている三年生以下の後輩達へ。変態の世界に仲間入りしたかったら読むことをお勧めします。


・・・
180kmのバイクで足は使い切ってしまった。現に、トランジの時に椅子に座ったら、足に力が入らなくて立ち上がれなくなってしまった。ボランティアの方に肩を担がれ何とか立ち上がった。もう座ることは許されない、そう覚悟を決めた。
ランコースは14km×3周。2km毎にエイドステーションがある。エイド多すぎ!5km毎でいいよね~。そんなことをレース前日は話していたっけ。

NZの日差しは強い。小学校の社会で「地球温暖化でオゾン層が薄くなったから、NZは日差しが強いんだよ~」なんて習ったことを身をもって感じた。
NZの3月は日本でいう、残暑が残る9月中旬。太陽が最後の夏休みを楽しむかのように、容赦なく照り付ける。
そんなギリギリな状態なのに、強烈な日光が僕を襲う。ランに入り300mですでに喉がカラカラ。足には力が入らない。2km先のエイドステーションがはるか遠くに感じた。
このつらさ、なんて表現したらいいだろう。きっと、IRONMANに出ない限りは味わえない苦しみだ。人生で味わった身体的苦痛史上の中で、圧倒的1位に入るくらいの苦痛だった。
そんな状態の中、あと42kmも走らなきゃならないなんて。馬鹿げてる。なんでこんなレースに参加したんだろう。約30万も払って海外に行って...
僕の心はマイナスな感情で溢れかえっていた。

あと5時間耐えれば終わる。5時間無意識になるんだ。とにかく何も考えない事を心がけた。なにもかんがえない。
折角大金払ったのに、何も考えないなんて、もったいないなぁ。無いのと一緒じゃん。そんなジレンマを抱えながら、ぼーっとしながら走った。
走る、というよりは足を引きずると言った方が正しい表現だが。そんなこんなで何とか1周を終えた。

一周目後半の僕。太腿が既にうっすら日焼けしている辺りから、日差しの強さが伺える。
足が上がらず。ずっとすり足で走る。

よし、一周終えた。残り二周!いける、いける!一見、気持ちがプラスになり、ケロッと走れそうな気分になる。けどこれが大間違い。「残り二周」これを意識する。
つまりは、あと28km、全筋肉がストライキを起こした足と、100m走っただけで干からびそうになる喉。これらから発せられる苦痛に耐えながら3時間近くもがかなきゃいけないのだ。

無意識の魔法が解けてしまった。

一回無意識が解けると、再び無意識になるのがとても難しい。辛いよ、辛いよ。そんなことをずっと考えながらひたすらもがいた。
無意識になれないぶん、もう無理!と感じたら立ち止まる、若しくは歩くようにした。
心身ともにコンディションは最悪だった。けど、不思議と完走は確実にできるな。という確信があった。それは制限時間が歩いても余裕でで間に合うから。そういう理由もある。
けどそれ以上に、一周走り終えたところで感覚が馬鹿になっていたからだと思う。14km走るのと、小ループ1周走るのが同じように思えたのだ。

途中、内腿の筋肉が完全に吊り、足が曲がらなくなってしまったので路上で座り込んだ。他のアスリートからと、「頑張れ、座ってる場合じゃない!」的な励ましの声を掛けられた。
ありがとう、けど僕は別に心が折れたわけじゃない。ただ物理的に足が動かなくなっただけ。それだけなんだ・・・

3分くらい休んで、また足を動かし始めた。ちょっと進んで、休んで。そんなことを繰り返した。そんな時、背中に100kgの重りでも背負っているかの如く、足を引きずりながら走る選手がいた。
みんな大好き筋肉お兄さんが目の前にいた。
バイクで勢いよく僕を抜いて時の覇気は一切なかった。彼の背中を捉えたとき、不思議と力が湧いてきた。さっきまでストライキを起こしていた足が、自然と動くのだ。
できるだけ、軽快な笑顔を作って、彼を抜いた。
彼にバイクの時の借りを返せたってのと、不思議と足が動くのがうれしくて、とっても爽快な気分だった。
と同時に、自分に対する罪悪感を抱いた。誰かを出し抜いた時に、喜びを感じる人間だったなんで・・・
人間は極限な環境に置かれると、本性が出るのだろう。22才(当時の年齢)にして、自分の心の闇を見た。嫌な気分になった・・・

筋肉お兄さんを抜き、ちょっと元気になると同時に、自分の心の闇を知った僕。

そんなこんなで2周目を終える。あと一周。勿論、相変わらず足の筋肉はストライキを起こしているし、喉はカラカラ。
けど、もう無意識になろうなんて思わなかった。すごく苦しいけど、この苦しみを含めてIRONMANを楽しみたい、そう思うようになった。
一種の悟りを開いたのだろうか、それとも、これがアドレナリンってやつの力なんだろうか。苦しみと楽しみが混ざったような不思議な感覚だった。
ラスト一周。あと一周でIRONMANが終わってしまう。もっと楽しみたかったな。そんな思いがずっと頭をよぎる。あと12km、11km。距離が短くなるたびに、
苦しみから解放される喜びと同時に、終わってしまう悲しみがこみ上げた。と同時に、心の余裕が出てきたのだろうか。二周目までは終始渋柿みたいな顔をして、
必死に苦しみを堪えていたのに、三週目はずっと笑顔だった。自然とペースが上がってくる。

ラスト5km、自分でも驚くくらいの切れの良さで走る。
ラスト3km、ここで周回コースに戻ったらあと一周分、IRONMANを楽しめる。それもアリだな。そんなことを考え始めた。
ラスト2km、スイムからランに至るまで、すごく辛かったな。そんな考えがぐるぐる回る。けどここまでやり切ったんだ。心に熱くなる何かがこみ上げる。

軽快に足を進め、いよいよゴールが見えてきた。ラスト100m
めちゃくちゃ足が軽い。自然と笑顔があふれてくる。まるで宙に浮いたような、時間が止まったような。すごく不思議な感覚に陥った。
ラスト、写真写りがいいように、カッコつけてゴールしよう。ラスト5kmではそんなことを考えていた。
なのに、自然と叫び声が出て、カッコつけようなんて気持ちがすべて吹き飛んでいた。目をかっぴらいて、最後の最後まで全力で駆け抜けた。
11時間もの死闘を乗り越えた人間とは思えないくらい、全力でラスト100mを走り抜けた。

目をかっぴらいて、最後の最後まで全力で挑む僕。

めちゃくちゃダサいポーズで、けど、最後の最後まで全力で。僕はIRONMANを完走した!!!!!!

恐らく、22年間生きてきて、一番力強い表情!!!見返すたびに、なんだか力が湧いてくる。

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