2016/03/18

IRONMAN episode4 ― A NEW FEAR 新たなる恐怖 ―


 

(引き続きドラゴンボールのアニメのナレーションでお願いします。)        

 

~前回のあらすじ~

何とか折り返しまでフリーザ(カズ)から逃げ切ったクリリン(ぼく)だったが、この後、本当の地獄を見たのであった~。

 

 

ナレーションはここで終わりにして下さい。はい、近藤に戻ります。

折り返しを終え、残りラスト45km。メーターの距離表示をちらちらと気にする回数が増える。

ここで、日差しが一段と強くなってくる。
ニュージーに来て、街をただ歩いたりしただけで日焼けがひどく、夜に体が火照って寝付けない日があったほどだ。そのため、暑さ・日焼け対策は十分に考えてあった。普段のショートのレースでは水をかけたことは一度もないが、エイドでは水をもらい、頭からかける。
バイクの前半は涼しいからつけておいて後半外したほうがいいよと堀さんに言われていたアームカバーも、日焼けのことを考えたらむしろつけておいたほうが良さそうだ。このカーフマンアームカバーは薄いからつけていても暑くない。いいチョイスをした。

 

ラスト40km。よし、あとはいつものレースと同じ距離を漕げばいいだけだ。気持ちが前向きになる。




しかし

 

あ、脚が….。辛い….

 

両足の腿裏が相当のダメージを受けていた。漕ぐたびに強い張りを感じる。幸いまだ痛みは感じない。ただ、腰は痛みを生じている。DHポジションが取れなくなってきた。仕方がない、あとラスト40kmは切っている。下ハンに切り替える。いつもの、藤野さんのローラー練を思い出す。藤野さん、力をお借りします。

しかし、メーターの示す巡航はもはや28キロを超えることができない。このままではカズに抜かれる―――。

 

ブログを書いている今となっては忘れてしまったが、実はこの後のどこかでカズとすれ違い、そのカズとの距離の差から、最低どれくらいのスピードで走れば追いつかれないのかを計算したのであった。
 
えーーっと、カズとの差が大体○km(数字は今は覚えていません)で、今の自分が大体26km/hくらいだから、、、。こんな具合に。
 
文系の自分がしたそんな計算が正しいかどうかなんかは分からないが、とりあえず自分が26km/hで漕ぎ続けたとしてカズが33km/hで追ってこない限りはバイクでは抜かれないという答えを導き出した。26km/hで頑張ろう!正しいかどうかは分からないがひとまず明確な目標ができ、集中力が高まっていく。頑張れ、俺。

 

だが、やはり180kmという距離は只者ではなかった。

僕の両足を削り、痛めつけてくる。

バイク終了まで残り30km25km20km…..

メーターの数字は既に26km/hを下回っている。

自分が誰かを抜くことはほとんどない。外国人選手達はサッと僕を抜いていき、一方の僕は順位を落としていく。


こいつらどんだけバイク速えぇんだよ、てかバイクがこんなに速い奴がなんでまだこんな位置にいるんだよこいつらどんだけスイムアップが遅かったんだよ、などなど思う。

 

ラスト20kmを切ってからはまともに漕げなかった。十回くらいペダリングしてスピードを出すと、足を止め休める。スピードが落ちたらまた少し漕いでスピードを出し足を止める。その繰り返しで、漕ぎ続けることは不可能だった。
下り坂では下ハンを持って身をかがめて自然に出るスピードに任せる。スピードが落ちてきたらひたすらこの繰り返しだった。


残り20kmを切ってくると、相変わらず牧場エリアだけど、アップダウンが増えてくる。登りでは、メーターの数字は20km/hを切ることが当たり前で、ひどい時は10km/hを切ることさえあった。平地でさえママチャリ並みのスピードしか出ない。


何度も後ろを振り向き、カズはいつ来るのか、本当に何度も振り向いた。Afloのバイクジャージと思しき赤色にヒヤっとしたのは5,6回くらいあった。お前紛らわしいんだよ、驚かすなよ、と赤いバイクジャージで追い越していく人達を心の中で罵倒する。何人カズおんねん。

 

これを読んでいる方は、さぞかし近藤はバイクで死んだんだろう、苦しんだんだろう、と思うかもしれませんが、いや実際死んだのは事実なのですが、脚が死んだだけで心は全く折れていませんでした。なぜかはうまく説明できないけれど、おそらくアイアンマンに出場できた喜び、なんやかんやで180kmという馬鹿げた距離を楽しんでしまっていること、自分が6人の中で2番目にいることなど――、とにかく、たぶん自分の眼は死んではいなかったと思います。
 

そして、牧場エリアを終え近づいてくる市内。タウポまであと4kmという元から設置されている道路標識。応援も徐々に増えてくる。

何とか無事に帰ってこれたようだ。


無事に市内に帰ってこれて安心する近藤。

 
沿道の観客たちには相変わらず手を振り、トランジヘ。不思議なことにランに対する不安は全くなかった。

 

トランジでは、バイクを自分でバイクラックに戻す必要はない。ボランティアの人が戻してくれる。トランジバックを受け取り、着替えるテント内でランに向けた準備をする。またしても一人の選手にマンツーマンでボランティアがついてくれ、手伝ってくれる。Thank you , と言い、6人の中では安藤に続いて2番目でいざランへ。

 
 

ランは14km×3周。日差しは最高に強いが、前日に買ったアイアンマンキャップを被って対策する。普段はキャップを被らない僕だが、さすがに日差しが強く、ここでは被る。

沿道はもう本当にすごい声援でした。両脇から多くの人が応援してくれる。

荒木さんは、ブログで、「(声援に対して)(^-^)b←こんな感じでちゃんと答えながら走りましたよ!」(2013年の荒木さんのブログより引用)と書いていて、さぞかし選手も観客もお祭り状態なんだろうなぁ、と思っていると


他の選手たちは応援ガン無視。誰も応援に応えている人がいない。

 

せっかく応援しているのにさみしいなあ、と自分が応援する側ならそう思い、ここで近藤選手、サービス精神を発揮することを決意。応援してくれる人にしっかり応える!サングラスはつけずに頭に乗せる。サングラスつけると観客に自分のリアクションが伝わりづらいからね。

基本的に、親指を立てるGoodのポーズで観客の皆さんに応える(先ほどの荒木さんのブログの絵文字みたいに)。たまに手を振ったり。

タウポ湖沿いのコースを走る。



今回のアイアンマンの目標の3つ目の通り、楽しむ。これを忘れたくはないと思い、とにかく応援してくれる人達と盛り上がりまくる。

Good Job!!」「Keep Going!!」「Nice Work!!」などと応援してくれる。このランコースは、バイクコースに劣らないくらいアップダウンが激しくて、ループの上り・下りのような箇所が5,6か所以上ある。しんどかったけれど、3種目の中で一番楽しい。それはもちろん応援してくる人たちと楽しめるから。

緩くて長い上り坂...。まだ元気。


実は、前々日などにスイムは試泳、バイクは試走をしましたが、ランコースは試走をしませんでした。その理由は、忙しかったというのもあるけれど、14kmのコースを3周回なんて絶対飽きると分かっていたし、それを試走で知ってしまうと最初から暗い気持ちになってしまうからである。実際のレースで少しでも心理的負担を減らすためにあえてランコースを知るのはレースが初めてにしておく、という戦略。
 
実際、1周目に関しては初めて走るコースのおかげでフレッシュな気持ちで走ることができた。手元の時計では1周目は1時間16分程度。荒木さんが3時間54分だったのでそれに勝ってみたいと思っていた。11時間20分で3周走ればぴったり4時間。4時間を切るためには11時間20分を超えてはならない。ペース的には悪くないペース。残り2周。

力走するコバシ。後ろの家の2階のベランダには椅子に座りながら応援してくれる人。住宅街コースでは、庭先や門の外で椅子などに座りながら応援してくれる人がたくさんいた。庭先からシャワーをかけてくれた人もいた。


自分の中ではこの2周目が勝負だと踏んでいた。なぜならば、1周目はフレッシュな気持ちでクリアできるし、3周目に関してはラスト1周だから自然と乗り切れるだろうと考えていたのに対し、2周目は気持ちが切れて中だるみしやすいのではと危険視していたからだ。
僕が観客の声援に応えまくっていたのには、実は自分の気持ちを切らさないため、自分を盛り上げるためという作戦上の理由もあった。42.195kmというキツくて退屈なランを乗り越えるのには、楽しいという気持ちがなくてはならないと考えていたのです。要は辛いことからの現実逃避ですね。


2周目。書くことはほとんどないです笑 
気を付けていたことは、バイクの時と同じでエイドで必ず水をもらい体にかけること。それ以外は、ただひたすら笑顔で、観客に応えていただけです。


他の5人について書くと、僕達の中でトップでバイクを終えた安藤は相変わらずトップを走っていた(ランコースで一部すれ違うところがあるので分かりました)。カズ、比企野とは1周目か2周目のどこかですれ違った。カズはだいぶ疲れているようだったし差もだいぶありそうだ。この時点でカズに負けることはないと確信。比企野に関してもバイクでそれほど追い上げられることはなかったようだ。東京マラソン2時間37分?くらいの実力者だが、負ける気はしなかった。

 

2周目を終え、3周目に入ろうかというところにエイドがあり、そこでコーラを飲む。荒木さんのブログには「コーラは偉大だ」と書いてあったので、このレースのランでは毎回のエイドで必ずコーラをもらっていた笑 もちろん、飲みすぎるとおなかがタプタプになるから量は気を付けていました。

 

コーン的なものを折り返し、3周目に入る。2周目のタイムは、手元の時計で1時間25分程度。タレたという感覚は全くなかったが、やはり無意識にペースは落ちていたようだ。大丈夫、あとラスト1周だ。

相変わらず周りに手を振りまくる。そして何気なく、さっき自分が立ち寄ったばかりの道路の反対側のエイドを右手に見ると….

 

 





比企野がいた。

 

 

 
 
まずい。

 

相当まずい。

 

 

抜かれないとか思っていたのに、普通に追いつかれた。比企野は、僕がつい1分くらい前までコーラを飲んでいたエイドでなにやら補給している。こっちには気づいていない。いつもなら、すれ違う時に「ファイト!」と声をかけるが、ここは露骨に顔を左に捻って比企野にばれないようにする。こそこそと隠れ、逃げるしかない。

 

逃げようとペースアップを図ろうとしたその時、

 


あ、脚が

動かない

 

リザルト(次回以降のブログに載せます)を見ても分かる通りだけど、感覚的にも本当に3周目に入った瞬間に脚が動かなくなった。

 
 

このままでは―

抜かれる――。

 
 

比企野がいたエイドからは200mも離れていない。補給を終わった比企野は、2分もしないうちにたちまち僕を追い抜いてしまうだろう。抜かれるのは時間の問題だった。カズには勝ったと思ったのに、今度はここで比企野が現れるとは――。
 
近藤選手、絶体絶命。彼の運命やいかに。

 

―次回に続く―

 

1 件のコメント:

  1. アイアンマン、本当に恐るべし・・・ですね。
    比企野さんに抜かれちゃうのー?ドキドキ!
    次回はいつ?

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