2020/02/25

カーフマンチャンピオンシップ学生OP レースレポート

カーフマンチャンピオンシップ学生OP レースレポート 齋藤光


たくさん考えるところがありました。


2/23(日曜日)

AM5:50

ケータイのアラームが部屋に響き渡った

聞き覚えのないアラーム音で、僕はまだ夢の中にいるのではないかと思った。しかし、隣には長田さんがいて、もうすっかり目を覚ましていた。「ああそうかレースか」その後すぐに僕のケータイが朝を告げた。

AM7:00

朝ご飯をたらふく食って、準備を済まし、部屋を出る。すると、皆も部屋から出てきた。軽い挨拶をして、車に乗り込んだ。僕は僕の中で高揚感はあまり感じられなかった。朝日は遠慮がちに雲の隙間から顔を出していた。

AM7:32

どんよりした雲が徐々に僕らを覆う。その一方、車は順調に進んだ。そのおかげで、概ね予定通りに会場に到着した。

AM8:00

テントを設置して、受付に向かう。予報では、雨の心配はなさそうだったが、会場はシトシトと僕らを濡らした。テントに入って、寒さをしのごうと思った。僕は、テントの中で、雨の音を聞きながら、ここに来たことを後悔した。

AM9:30

なんで来てしまったのだろうか、こんなにもーー

突然、スピーカーから興奮した声が会場内に響き渡った。外に出るとビギナーやキッズが走っていた。僕もそろそろウォームアップを始めなければいけないのだが、身体が重い。雨は止んだり、降ったりしていた。僕は小さな身体で大きく走る子供達を見ながら、軋みをほぐすようにジョグをした。

AM9:40

ジョグが終わっても、身体は重い。いや、より倦怠感が増した気がした。長時間シートに座り続けていただけではない。体調が悪いのだ。出発前、連日の高強度が終わった夜、いよいよ喉は腫れ上がった。バイトも早退した。そのまま回復することなく、遠征に行くことになってしまったのだ。僕はとてもレースをする気にはならなかった。

しかし、残念ながら時間は僕を振り返って、待っててはくれない。まるで、雨粒が天から一直線におちてくるように、ひどくシンプルに時間は進む。

AM10:00

残すはあと30分。あと、30分後には走り出し、1時間半走り続ければ終わりだ。そうしたら後は楽しむだけだ。何度も何度もそう自分に言い聞かせた。動きたくない身体を諦めさせるように、僕は念じた。

AM10:25

スタートラインにエイジに出場する選手達が集まった。もうやるしかない。覚悟を決めた矢先に、風が吹き荒れ、体感気温はぐっと下がる。それとともに、僕の決意は揺れ、頼りないものに感じた。

AM10:28

皆が上着を抜き出した。僕も信じられないほど薄着な姿を寒空に晒した。しかし、やるしかない。

AM10:30

選手が一斉に走り出した。


僕はここから先、時計を一度も見なかった。


1st18:40(4)

調子が良くなかったので、僕は控えめのスタートを切った。ペースで走りつつも、強風のため単走が最悪手だろうと踏んで、集団についていくことにした。第2集団ではあったが、焦らなかった。前から必ず落ちてくると思ったからだ。下手に前についていって、単走となれば、ズルズル落ちていくことは容易に考えられた。

案の定、ついていけなくなった選手が落ちてくる。僕らの集団にもついて行けないようだ。前の選手の肩から先頭集団が見える。差は予想より開いていない。距離を消化するにつれ、先頭集団は分断され、何人かパスした。しかし、僕もより一層風が辛く感じた。脚が前に出てこず、進まない。皆も辛い。そう考えることにして耐えた。実際、集団もペースが落ち、疲労を滲ませていた。

トランジ前には、ペースアップをして集団を少し先行するかたちで1stを終える。

Bike52:10(8)

トランジの時点で学生4位ほど、悪くない位置にいる。ここでどれだけ粘れるかが重要だった。しかし、心拍はすでにきつく、向かい風。なかなか、自分のペースに持っていけない。なんとかDHバーにしがみつき、オーバーペース気味な気持ちを落ち着かせた。が、暴風はそんなことお構いましに襲いかかる。

風速は6m。いつも走るりんりんなど比ではないほど風が強い。途中横風もあり、バーが握れないほど煽られる。巡航が落ちていき、多くの選手にも抜かれた。トランジでは4位だったのが、5位、6位と巡航速度と比例するように順位も落としていく。抜かれた選手を見ると僕より大柄で筋肉質であった。

僕は不利な状況にあった。コースレイアウトは平坦、しかも風が強い。これは軽く小さい僕にはどうしたってマイナスに働く。体重が重ければ、それだけパワーも出るはずであり、平坦ではそれが活きる。僕にもう少し背があれば。と思った。しかしながら、もちろん身体は小さくても強い選手はいる。僕の言い分はただの弱音であり、みっともない言い訳である。不利な状況でも勝てる選手はいる。

体格も、心肺機能も並かそれ以下。確かな競技的バックグラウンドもない。才能など毛ほどもない。エリートの選手は長い間トレーニングを積み重ね、トレーニングによって培った後天的な能力を得て、たとえ恵まれた身体ではなくとも戦えるのだろう。

どれだけ積み重ねたのだろうか?上を見れば見るほど果てしない。

こんなどうでもいい、考えてもどうしようもないことを思いながら、抜かれた選手との差が開いて行くのを感じた。

腰にも異変があった。長らくバーをつけておらず、エアロポジションを維持するのがキツかった。これにはポジションがあっていないというのと、そもそもエアロポジションでの練習不足が挙げられる。

また、巡航する能力も鍛える必要がある。今までは集団走を想定し、その立ち回りやインターバルの練習をしていた。このおかげで、脚を貯めるポイント、1、2分など短時間の出力はある程度出せるようになったが、しかし、長時間の出力にはまだまだ不安が残る。そのため、ここに焦点を当ててトレーニングをしたい。20分走や、テンポ走だろうか。筋力トレーニングも取り入れていきたい。

まだまだ未熟なバイク力に辟易としながら、六周回を終え、トランジに向かう。寒さや雨はもう気にならなくなっていた。

2nd19:51(4)

トランジに入るとすぐ後ろに学生がいて、冷や汗をかいた。この時点で4位。前とは1分以上空いているようだ。

差はあるが、ここまできたら入賞したい思いで、飛び出す。

しかし、走れども走れども前は見えない。折り返しで確認するも依然、差は縮まっていない。一方、後ろの選手からは詰められている。せめて、この位置をキープしたかった。向かい風の中でペースを上げたが、やはり後ろは迫ってきていた。

ついに最終周の折り返しで捉えられる。向かい風で自分もキツイ中、前に出られた。相手の後ろ姿は僕よりも走れているように見える。勝てるだろうか?不安が僕の脚に絡み付いた。しかし、勝ちたい。

心臓も脚もキツイが前とは離れなかった。すると、前の選手のペースがわずかに落ちた、と思ったら、乱れが見えた。どうも僕をそのまま千切ろうとペースを上げていたが、引き剥がせなかったのでキツかったのだろう。

ここしかないと思った。僕はペースを上げ最後500mほどで先行した。後ろにつかれたらまずいので一気に離しにかかる。辛い向かい風。押し戻される感覚。心臓が苦しそうに鼓動する。でも脚を止めるな。心を燃やせ。

「心を燃やす」僕の好きな漫画に出てきたセリフだ。僕はずっとこの言葉を心の中で繰り返し唱えた。そうして何とか自分自身を奮わせていたのだ。

心を燃やすんだ。とにかく無我夢中で走った。結局後ろに追いつかれることなく4位でゴールテープを切った。


Total 1:30:41(4)

何とか4位はキープしたが、3位に入りたかった。満足しているかと言われたら、していない。しかし、収穫もあったし、ある程度レース慣れもしてきた。何よりも楽しかった。

これからもまだまだ弱い自分を再認識し、また積み上げる。これしか僕にできることはないから。

最後に、応援してくれた方々、サポートしてくれたみきおさん、ほっT さん、僕を励ましてくれた朝陽さん、本当にありがとうございました。確実に皆さんがいなかったらどこかで折れていたと思います。心の底から感謝しかありません。


齋藤光








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